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「ヒット、エンド、ラ〜ン」でお馴染みの鳥居みゆきだが、私が初めて見た彼女のDVD「ハッピーマンデー」を体験した後、彼女の印象はこれまでとは多少異なるものとなった。私は鳥居みゆきを初めて見た時を鮮烈に覚えているわけではないが、それでもどこか異物感を伴いながら、そういやこんな芸人もいたっけな、と記憶の片隅に彼女の居場所を作ってしまったわけだけど、たいていの場合彼女は彼女の出演するバラエティー番組あるいはネタ番組に純白の信者服に、包帯の巻き付けられた熊の縫いぐるみをを手にし、長く暗闇色の髪の毛を掻き乱し振り乱れ、裸足でぴょんぴょんと「ヒット、エンド、ラ〜ン」といった感じであり、これは誰にとっても馴染みになっている彼女の姿だ。このカルト宗教的衣装/意匠は実に90年代的であり、彼女のキャラとネタには指摘するまでもないがオウム真理教的カルトの姿が見え隠れする。ただしかし、それは彼女のTV用の意匠であり、TVよりもはるかに縛りの緩い彼女の単独DVDにおいてはまた別の意匠、そしてこれが私には鳥居みゆき彼女の創作する上でのルーツが直截的に表現されていると思うのだが、を採用している。 「ハッピーマンデー」において、彼女のネタは、多少アクロバティックな見せ方をもって表現されるのだが、それは閑散とした商店街のいわゆるシャッター通りに、お馴染みの信者服を着た鳥居みゆきがシャッターの郵便物受けの隙間から中をのぞき込み、のぞき込まれた中では、彼女(もちろん鳥居みゆきだが)が廃墟のような一室において聴衆誰ひとりいないなか、ネタを披露するというものだ。内省の暗喩としてこのような手法がとられたことは間違いないが、なによりも彼女のネタが「のぞき」によって私たちが受け取ることが出来ているという点が後々重要になってくる。 その前に個々のネタを軽く紹介しておきたい。 「コックリさん」。タイトル通りファミレスでコックリさんをしている女性のネタ。服装はいつもの信者服であるが、「ヒット、エンド、ラ〜ン」的要素はほぼ見られない。むしろ必見すべきところはコックリさんに思い人である高橋君の好きな人を訪ねる際に見せる、彼女のチャーミングさだ。このチャーミングさは「米のよしだ」においても見られ、海水浴で海水を恋人とかけ合うように、米をかけ合っている様子をしている際にも見られる。また「ひきこもり」では同僚に恋人を取られた上、できちゃった婚をされてしまう女の嫉妬を描き、「水子供養」では、TVにおいてボツになり披露することが出来なかったネタ(子供)を、演じ直すことで供養する、というネタ。そして個人的にもっとも興味深く感じ、かつレッドメーターを振り切っていた「妄想妊婦」であるが、ここまで見れば鳥居みゆきのネタに対するある態度の一貫性に気づくが、つまり彼女は古風な少女性/処女性/女性性というものを、繰り返し繰り返しネタの中心に据えている。この彼女のモダンへの傾向は現在の「お笑い」のある流れに反しており、というのも「お笑い」においても昨今では「共感」が大多数の視聴者から支持を得るための重要なキーワードのひとつとなっているが、いま10代、20代の女性お笑いファンは数多くいるが、果たして、彼女のネタに「共感」出来る視聴者はどのくらいの割合くらいいるのだろうか?このような統計を私は調べる術を持たないので決定的な言葉はさけるが、決して半数にも満たないだろう。だから彼女はTV番組においてはカルト的振る舞いという、ある種ピエロ的なネタにより、大多数から大なり小なりの笑いを取るが、決してこれが彼女の本領ではないし、本意でもない。繰り返しになってしまうが、鳥居みゆきの本領は受動的に目に入ってしまうTVのネタではなく、「のぞき」たいという能動的さをもって彼女に興味をもった者が手に取るDVDでのネタにある。 彼女のモダンなネタには、時折どこか耽美さを感じさせる。それは夢野久作の小説であったり、あるいは横尾忠則の絵、丸尾末広のマンガのように、耽美さとエログロナンセンスを包含しているわけだが、それは彼女の文学の素養がもととなっていることは言うまでもない。「ハッピーマンデー」においてネタとネタの間にある「100の質問」という小コーナーにおいて「自分の好きなところは?」と聞かれた彼女は「神保町」と即答する。完全に質問を誤って受け取っているが、しかしこの答えにはただ単に口に出た以上の信憑性がある。素顔の彼女は(そういえば100の質問で「化粧の時間は?」という問いに対して「惜しまない」と答えた彼女の素顔は是非見てみたいものだが)仕事の合間に古書店をはしごする、読書好きであることは間違いがない。他、彼女のネタを説明する際に重要なものは60年代、70年代のアングラ演劇であることは言うまでもないが、まぁそれは別の話。とにかく私が言いたかったのは鳥居みゆきはチャーミングだってこと。見てみてわからなかった方に私は助言が出来て、「わかるまで繰り返して見ろ」と。 鳥居みゆき『ハッピーマンデー』 post by dhmo
by critique_gips
| 2009-02-16 20:46
| 大体アラザルが毎日批評
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